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スイーツストーリー5
マルセル・プルースト 絵
偉人 マルセル・プルースト

美食家としても有名な彼が愛したお菓子はマドレーヌだった!?
 「私は無意識に、紅茶に浸してやわらかくなった一切れのマドレーヌごと、ひとさじのお茶を すくって口に持っていった」(鈴木道彦訳・集英社)
 マルセル・プルーストの長編小説「失われた時を求めて」の一節です。マドレーヌを口にした 途端、プルースト本人とされる「私」にある大きな変化が起きました。コンブレー(「私」の父親 の故郷)で叔母のレオニが日曜の朝にくれたマドレーヌのかけらの味がよみがえり、それが 引き金となって、一家で休暇を過ごしたコンブレーでの出来事をありありと思い出し、セレブな フランス社会を背景とした長い長い物語が繰り広げられていくのです。
 20世紀を代表する小説の一つとされる「失われた時を求めて」を書いたプルーストは、1871年、 医者の息子としてパリ郊外で生まれました。病弱だったこともあり、少年時代にはコンブレー のモデルとされる村イリエで長い休暇を過ごしたとか。その後、パリ大学で法律を学びますが、 健康がすぐれず、特に仕事には就かずに社交界のサロンに出入りし、いわゆる「高等遊民」 的な生活を送ります。この時期に彼は、音楽から美術に至るまで幅広い審美眼を磨いていき ました。
 小説を書き始めたのは30歳過ぎてから。「失われた時を求めて」全7編のうち、5編以降は彼 の死後に刊行されていますから、彼は生涯をこの小説に注ぎ込んだわけです。
 プルーストは「失われた時を求めて」に登場するマドレーヌを、「帆立貝の筋の入った貝殻で 型をとったように見えるお菓子」(鈴木道彦訳・集英社)と書いています。食べ物の記憶はその 時代とともに私たちの心にくっきりと刻み込まれます。美味しいお菓子であればなおさらのこと。 さまざまな美味を知り尽くした美食家プルーストにとって、マドレーヌは特別なお菓子だったの です。
スイーツエピソード マドレーヌ

貝殻形をしたかわいらしいお菓子は時を超え
                人々に愛され続ける

 見ての通りの、貝殻形をしたかわいらしいお菓子です。またマドレーヌと いう名前も愛らしいですね。それだけに、これにまつわるいわれや逸話も 少なからずあります。19世紀に活躍したフランスの製菓人ピエール・ラカン  Pierre Lacam(1836~1902)の書いた「パティスリー覚え書き」によると、 ナポレオン時代(在位1804~1814)、タレイラン公のもとで働いていたアヴィス という偉大な製菓人によって作られたとされています。
 彼はカトル・カール(パウンドケーキの一種)用の種を用いて、ゼリーの 寄せ型で小さなお菓子を作ったところ評判となり、菓聖と謳われたアントナン ・カレームなどの称賛を得たといいます。そして、心地よい口当たりと小さな かわいらしい形からイメージしてマドレーヌと名付けられたとか。なお、別の 説ではこれよりはるか以前に作られていたともいわれていますが。
 マドレーヌの作り方は長い間秘密にされていました。あるときそれは、ロレ ーヌ地方ムーズ県コメルシーという町のお菓子屋に非常に高い値段で売ら れました。その製法を買った土地の人は、この美味なお菓子を自分たちの 町の名物にしたといわれています。事実、今もマドレーヌはこの町の銘菓と して多くの人々に親しまれています。またさらに別の本では、発明者はコメ ルシーの町でコックをしていたマドレーヌ・ポールミエという人だと特定して います。その他にも、ルイ15世の義父である元ポーランド王スタニスラス・ レクチンスキー付きの女性料理人が考案したとの説もあります。スタニスラ ス王がルイ15世妃である娘のマリー・レクチンスキーにこれを届けたところ、 たいそう気に入り、考え出した料理人の名誉を称えるために、彼女の名を とってマドレーヌと名付けたといいます。
 エピソードはいくつあっても楽しいもので、ヴェールに包まれていればいる ほど好奇心をそそられます。ただ諸説を見るに、やはりコメルシーを発祥と するものが有力なように思われます。
 なお形については、最初から小型ではあったようですが、なぜ貝殻形に なったのかはつまびらかでありません。古くよりスペインの大西洋岸にある サンチャゴ・デ・コンポステーラという寺院への巡礼が盛んでしたが、その 巡礼者たちがホタテ貝の殻をお守りとして、あるいは携帯用の食器として リュックサックの背に付けて持ち歩く習慣があり、それを引き継いでいるとも いわれています。
 また長さ4~5cmのマドレネット madeleinette と呼ばれるひと口サイズの 小さなものがありますが、これについては、作られたのは近年。昔の資料に は見当たりません。かわいらしいプティフールのひとつとしてのお目見えで、 配合や作り方は通常のものと変わりませんので、それ用の型を見つけられ たら、一度試してみてはいかがでしょう。
 それにしてもこのマドレーヌ、そのかわいさと食べやすさ、そしてそのおいし さゆえに、古今多くの人々を魅了してきました。フランスの小説家にして思想 家のマルセル・プルーストもそんな人のひとりだったようです。

文献:吉田 菊次郎 編・著 「クリムとドリムの冒険」偉人が愛したスイーツ
ケーキ マドレーヌ 絵

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